自然石を使用した、ペット墓の製作

呉市・江田島市を中心に、お墓や石材のお仕事をさせていただいております、増木石材店の増木です。お客様の持ち込まれた自然石を使用した、ペット墓の石碑を製作させていただきましたので、ご紹介いたします!

 

ペット墓「無窮」

 

ホームページをご覧になったお客様がご来店くださいました。「ペットのお墓を作りたい」とご希望で、そのお墓にぜひご自分で書いた文字を彫りたいとも希望されていました。

 

こちらは加工前の石です。今回は、使用する石もお客様がお持ちくださいました。自然の形がいいということで、候補の石を三つも探してきてくださいました。その中でも一番の候補となっていた石が加工面でも良い石でしたので、この石でお作りすることになりました。

 

高さは40cmほど、幅も20cmほどなので、普通に持ち上げられるくらいの重さです。後ろはこのように、自然のままのデコボコした状態で、全体的には三角のような形でした。これから加工を行います。

 

前面と底面を切ったところです。切ってみると、断面はグレーで表面とは全く違った色合いです! 通常お墓や記念碑などに使う、名のある石ではありませんが、自然な味のある色合いですね。お客様にお話して、彫刻をする前に表面を磨くことをご提案すると、「それなら」とこちらにお任せいただきました。立てられるように底面もカットして、これから前面を磨いていきます。

 

さきほど切った石の表面を磨いていきます。黄色い丸いものは砥石で、これが回転しながら平らになるように研磨しています。

 

その後、磨きの全行程7工程のうち、半分くらいの3工程まで進んだところです。少し色合いが違ってきました。

 

初めは粗い目で、最後の方は細かい目の砥石で磨いていきます。ツルツルになるまで磨き上げて完成です。

 

磨きの工程を終えました。かなりツヤも出て、濃いグレーの色合いで、雪のような白い模様も見え、味があってなかなかいい石目です。

 

こちらはお客様がおもちくださった直筆の書です。「無窮」と記されています。「無窮」は、きわまりないこと、無限、永遠 などの意味があるそうです。あまりに達筆でびっくりしてお話を伺うと実は書道の先生をされているそうで、さらによくお話を伺うと、数年前から私が通っている書道教室と同じグループに所属されている方でした^^ 残念ながら、毛筆で書かれた文字のかすれは表現できませんが、彫り方の深さの加減で筆圧の強弱などをできるだけ表現することをお伝えして、彫刻作業に移りました。

 

書いていただいたものを石に彫刻する準備をしています。石の彫刻面に対する文字のレイアウトはお任せいただき、石に貼り付けたゴムシートに文字を転写しました。このあとゴムシートを文字の形にくりぬいてカットして、その部分を彫刻します。落款もご用意いただきました。

 

彫刻完了です。ゴムシートをくり抜いた部分を、サンドブラストという機械で彫りました。サンドブラストはお墓の文字彫刻と同じ技術です。細かい砂(サンド)のような粒子を高圧で吹き付けて、石を削る方法です。シートをはがして色を入れたら完成です。

 

完成しました!

お客様とお話して、文字には白色を入れています。また、そのままでは表面が少し単調な印象があったので、左右の下端にノミで叩いた模様を入れました。角がとがった硬い感じも気になったので、少し丸みを感じられるように仕上げています。

 

前面の磨いた部分はグレーですが、「皮」と呼ばれる自然なままの石肌は茶色っぽく、ごつごつした質感のままです。とても味わい深い、素敵な仕上がりになりました。お客様も、想像以上の出来だったととても喜んでくださいました。

 

仕上がりをとても気に入っていただけたので、今回完成した墓石はこちらの「街かど市民ギャラリー」で開催された書道グループの作品展にて、作品のひとつとしてひと月ほど飾っていただくことになりました。その後、お墓として使われることになります。

今回は、お客様が持ち込まれた自然石を使ったペット墓の製作というとても珍しいお仕事でした。きれいに磨かれた墓石ももちろんとてもきれいですが、自然石を使ったお墓も味わいがあっていいなあと改めて感じました。自然石の加工は、切ってみないとどんな色合いのどんな石かも分からなければ、磨いたらどうなるのかも、最後まで分かりません。そこが自然石ならではの難しいところもありますが、同時に自然石を扱う面白さでもあり、魅力でもあります。とても印象に残る貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。